高遠原:11回目のレースは今年最後の大一番有馬記念!
朝霧:有馬記念って、有馬温泉と何か関係あるの?
高遠原:無いよ。
朝霧:じゃあ、有馬って何なの?
高遠原:このレースを創設した有馬頼寧(ありまよりやす)伯爵のことだよ。
朝霧:伯爵!?
高遠原:うん、伯爵。華族で政治家でもあったんだ。戦前には農林大臣も務めてるよ。
朝霧:へー。で、何でそんな人が競馬のレースを作ったの?
高遠原:有馬伯爵は日本中央競馬会の第2代理事長なんだけど、日本ダービーと匹敵するぐらいの、つまりそれぐらい盛り上がる大レースを中山競馬場で作りたいと考えたらしいんだ。そこで考案されたのが、ファン投票によって出走馬を決定するオールスター戦。記念すべき第1回は「中山グランプリ」という名前で行われたんだよ。
朝霧:なるほど。でも、伯爵の願いは叶ったよね。今では、年末の風物詩と言っても過言ではないぐらい盛り上がるもんね。
高遠原:うん。普段馬券を買わない人でも有馬記念は買うっていう人もいるぐらいだからね。
ところで、この有馬伯爵はプロ野球の球団オーナーや日本野球連盟の相談役などを務めたこともあって、実は野球殿堂にも入ってるんだ。
朝霧:えー! そんなすごい人だったの?
高遠原:うん。あんまり知られてないけど、競馬以外の分野でも実はすごい人だったんだよ。
ファン投票によって出走馬を決定するという方法は、プロ野球のオールスター戦からヒントを得たんだろうね。
朝霧:あー、なるほど。じゃあ、有馬伯爵が野球に興味の無い人だったら、ひょっとして有馬記念は創られてなかったかも知れないね。
高遠原:うん。日本競馬の歴史が変わってた可能性は高いね。
朝霧:でも、知らなかったなー。そんなすごい人の名前が付いたレースだったなんて。有馬温泉なんて言ってごめんなさい。
高遠原:誰に謝ってるんだか(笑)。
朝霧:もちろん有馬伯爵だよ。
高遠原:(笑)。許してくれるよ。
朝霧:だといいけど(笑)。
高遠原:さて、前置きが長くなったけど、有馬記念の傾向を見ていこうか。
朝霧:うん。お願いします。
高遠原:実は、このレースには実力と同じぐらい大事な力が必要になるんだ。
朝霧:どんな力?
高遠原:余力だよ。
朝霧:余力?
高遠原:そう、余力。数々のレースを戦ってきた猛者たちが一年の最後に参戦するレースだから、出走馬の疲労度も高いんだよ。
朝霧:最後の力を振り絞って戦うレースなのね。
高遠原:そういうことになるね。芝の中長距離路線を歩む馬にとっては天皇賞(春)までGⅠは無いから、その前哨戦までは休養することになるからね。
朝霧:でも、余力があるかどうかなんて、どうやって見るの?
高遠原:それはパドックで実際に馬を見るのが良いんだろうけど、素人には分からないしね。
朝霧:うん、分かんない。
高遠原:俺もある程度までしか分からないよ。
朝霧:じゃあどうするの?
高遠原:ローテーションから推測するんだ。
朝霧:前のレースからの間隔が短いとダメってこと?
高遠原:そういうこと。ここ10年で見ると、12月に出走していた馬で有馬記念でも複勝圏内に来た馬は1999年3着のテイエムオペラオー唯一頭のみ。
朝霧:最低1ヶ月の間隔は必要ってことで良いのかな?
高遠原:そう考えて良いと思うよ。あとは出走馬が走ってきたレースを分析して、消耗度を量るのも大事だね。
朝霧:消耗度を量るって、どうやって?
高遠原:レースのペースを基準にして考えれば良いよ。道中のペースが速くて、最後の4ハロン・3ハロンのラップタイムが極端に遅くなってるレースは消耗度が高いと言えるね。特に先行して粘った馬にとっては。逆に、道中は緩いラップタイムで推移して、上がりだけの競馬になったレースは消耗度が低いと言えるね。
朝霧:なるほど。
高遠原:展開面で言えることは、圧倒的に先行した馬が有利ってことかな。少なくとも4コーナーでは10番手より前にいないとまず届かない。例外は2000年1着のテイエムオペラオーと2006年1着のディープインパクトの2頭のみ。どちらも数多くのGⅠを勝った歴史的名馬だね。
朝霧:それぐらいの名馬じゃないと、直線ゴボウ抜きは無理ってことなんだね。
高遠原:そういうことだね。
これぐらいかな、有馬記念を予想する時に気を付けたい点は。
朝霧:ところで師匠。
高遠原:ん?
朝霧:余力は、ある?
高遠原:もちろん! まだまだ闘志満々だよ!
朝霧:良かった。ここまでかなり打ちのめされてたから意気消沈してるんじゃないかと思ったよ。
高遠原:……お気遣い、ありがとうございます。
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