高遠原:だんだん追い詰められてきたね。
朝霧:……。
朝霧:祝勝会が遠いね。
高遠原:はい、残念至極会始めるよ。
朝霧:そんな変な名前の会なんてやだ~。
高遠原:じゃあ、大残念会。
朝霧:それも嫌。
高遠原:じゃあ、何だったらいいの?
朝霧:祝勝会。
高遠原:利益が一円も無かったんだから、それは駄目。
朝霧:何で? 完全的中したじゃん!
高遠原:結衣ちゃん。競馬は的中を競うゲームじゃなくて、あくまでギャンブルなんだよ。ギャンブルである以上、一円も儲けが無ければ、それは負けに等しい。
朝霧:そんなこと分かってるよ……。
高遠原:次に勝てるように反省すべき点はちゃんと反省しないと。
朝霧:……、うん。
でも、今回反省することなんかあるの?
高遠原:それがあるんだ。
朝霧:何?
高遠原:マイネルキッツを切れなかったこと。
朝霧:え? マイネルキッツは天皇賞(春)を勝った馬だよ。この馬のお蔭で美味しい思いができたんでしょ?
高遠原:それだよ。
朝霧:どれ?
高遠原:天皇賞(春)でお世話になった馬という意識が、少なからずこの馬の評価を甘くしたんだ。
朝霧:じゃあ、マイネルキッツはそんなに強い馬じゃないってこと?
高遠原:うーん、どう言ったらいいのかな? 強い馬じゃないという訳じゃなくて、天皇賞(春)を勝ったのは少し恵まれたところがあったからだと、そう判断するのが正しいんだと思う。
朝霧:恵まれたって、具体的には?
高遠原:マイネルキッツは勝負処で最内にコースを取ってたんだけど、4コーナー手前でこの馬の前がポッカリ開いて、難なく先行馬との差を詰めることができたんだ。
朝霧:それが勝因になったという訳?
高遠原:これだけが勝因という訳じゃないけどね。差を詰めて、さらに直線伸びるだけの脚が残っていたことも事実だから、もちろん実力もある。
朝霧:どっちにしろ、レースが終わった後でそのことに気付いてもどうしようもないよ。
高遠原:いや、前から分かってたんだ。
朝霧:え?
高遠原:分かってたんだけど、幸か不幸かマイネルキッツが1番枠に入ってしまったことで、もう一度同じように走れれば、何とかなるかもしれないと、つい考えてしまったんだよ。
朝霧:あ~、何となく分かるな、それ。夢よもう一度ってやつだね。
高遠原:そうそう。人気も5番人気と今年の天皇賞馬にしては低かったからね。つい欲が出てしまった。
朝霧:じゃあさ、マイネルキッツが外枠に入ってたり、もっと人気してたら、買ってなかった?
高遠原:その可能性は低くはなかっただろうね。
朝霧:う~ん。たった一頭の馬の取捨にも色んな要素が複雑に絡むんだね。競馬って、やっぱり難しいな。
高遠原:難しいからこそ、的中した時、利益が出た時の喜びも大きいんだよ。
朝霧:そうだね。
高遠原:さて、2009年上半期のGⅠも総て終わったから、総括なんぞしてみようと思うんだけど。
朝霧:また残念会?
高遠原:いや、まあ、確かにこの上半期もマイナス収支ですけど、一応、上半期の納会ということで……。
朝霧:しょうがないな。じゃあ、納会ということにしといてあげるよ。
高遠原:恐れ入ります。
朝霧:師匠って、休み明けの馬は買わないことが多いよね。
高遠原:そうかな?
朝霧:そうだよ。
後ほど、UPします。
朝霧:で、どういうことなの、勝負勘が戻らなかったって?
高遠原:うん、実は